今回の報告書は、2000年9月から2年間にわたり、検討を続けた結果を集約したもので、運輸部門におけるCO2の削減のため、クルマから自転車への転換を促すにあたり、自転車の活用推進にとっての課題、問題点を網羅するとともに、現行関連法規の改正、もしくは新法の制定を求めている。
報告書はまず、都市交通体系の中に自転車を明確に位置づけるとともに、走行空間の確保を強く求めた。「軽車両」という位置づけにある自転車は本来、車道ないし専用レーンを走行することが原則であり、この原点に立ち返るよう要望。路上違法駐車の徹底排除と、トラック業界などによる路上荷捌きの早期ルール化を訴えている。
また、駅前放置自転車を削減するため、鉄道事業者に駐輪場の設置を義務づけるとともに、車道上の駐輪など、新たな発想による駐輪場の確保を求めた。最近急増している輸入自転車に関しては、国としての安全基準を設け、同時に安全走行教育を小学校低学年から徹底するよう提言している。
さらに、循環型社会をにらんで、自転車の共同利用とリサイクルにも言及し、公共(共有)自転車の普及と放置自転車のリユース、途上国への寄贈に積極的に取り組むよう強調する一方、クルマから自転車への転換を促すため、自転車通勤者への経済的インセンティブの導入、鉄道車両等への持ち込みを拡大するよう求めている。
このほか、自転車政策を総合的に展開するため、政府内に一元化した政策を担当する調整担当(官)を設置することを求め、自転車利用者の声を政策に反映させるため、「自転車ユーザーユニオン」(仮称)の創設を提言。これらを合わせて、短期、中長期の計26項目の提言を掲げた。
提言
- 〈短期〉
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- 地球温暖化対策推進大綱(新大綱)の中に位置づけられた自転車の活用推進を確実なものにすること。
- 自転車を都市交通の中に明確に位置づけ、公共交通と自転車を中心とした都市交通政策を確立すること。
- 路上違法駐車の排除を徹底するとともに、路上荷捌きを減少させるため、荷捌き場確保に関する業界ルールを早期に策定すること。
- 鉄道事業者に対し、駅前駐輪場の設置を義務づけること。
- 道路上、及び都市公園・緑地等での駐輪スペース確保を可能とすること。
- 循環型社会をめざす観点から、公共(共有)自転車の普及に拍車をかけるとともに、途上国への自転車寄贈を促進する全国的な枠組みを構築すること。
- 自転車通勤者に経済的なインセンティブ(通勤手当の増額、所得税控除など)を付与すること。
- 内閣府の政策統括官(総合企画調整担当)の自転車問題への取り組みを強化すること。
- 優良な自転車販売・整備業者の育成・指導を強化すること。
- 自転車利用者を結集した組織(ユーザーユニオン)を創設、利用者の声を集めて政策に反映させること。
- 国の自転車安全基準を設定するとともに、整備マニュアルを作成、整備指導員制度を確立すること。
- 自転車教育のカリキュラムを見直し、小学1年生から実地教育を実施すること。
- 条例等により、交通指導員に自転車走行モラル、放置への指導権限を与えること。
- 自転車による交通違反に対する反則切符制度の導入を検討すること。
- 国、自治体は自転車を率先して利用すること。その際、放置自転車を積極的に活用すること。
- 放置自転車の保管期間を大幅に短縮すること。
- 自転車の歩道走行に関するルールを確立すること。
- 「自転車活用推進法案」(仮称)を早期に国会に提出、成立をめざすこと。
- 〈中長期〉
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- 自転車優先都市への誘導に向けて、自転車専用道(レーン)を確保すること。
- 上記のために、クルマの車線を段階的に削減、同時に、都心部の速度制限を30km/h以下にすること。
- 上記1,2により、「軽車両」の原則立ち返って、自転車の歩道走行を段階的に廃止するよう努力すること。
- 路上荷捌きを原則的に禁止すること。
- 鉄道に自転車を持ち込める専用車両を連結するとともに、それに対応して駅構造を改善すること。
- 自転車利用者の応分の負担を検討すること。
- 政府内に自転車総合政策を統括する専門セクションの創設を検討すること。
- 自転車の一元管理のため、車籍登録の義務化を検討すること。