発足総会
時代の流れは早いもので「自転車活用推進法」が成立して丸二年。政府内に推進本部ができ、推進計画が昨年6月に閣議決定され、いよいよ主役である地方自治体が動き始めた。うれしいことに首長さんたちが動き出した。呼びかけたのは、しまなみ海道を抱える愛媛県今治市の菅 良二市長やビワ一(琵琶湖一周)の拠点となっている滋賀県守山市の宮本和宏市長らで、精力的に仲間作りを行い、11月15日に東京で「自転車を活用したまちづくりを推進する全国市区町村長の会」の発足総会を開催した。
スタートに名を連ねた自治体は294。全国には1,741の市区町村(18年末現在)があるが、すみずみまで呼びかけられなかったのか、様子見を決め込んだところが多かったのか、大都市の参加が少ない。県庁所在地で参加しているのは水戸市、宇都宮市、前橋市、さいたま市、静岡市、大津市、奈良市、和歌山市、松江市、広島市、高松市、松山市、大分市、宮崎市、鹿児島市の15だけにとどまっている。
とはいえ、政府が計画に掲げた「自転車ネットワークが整備された自治体を20年までに10か所つくる」とか、「広域のモデルルートを40本指定する」などの目標は、何人かの首長がその気になれば容易に達成できそうだ。
それにしても政令指定都市ではさいたま市、静岡市、堺市、広島市だけというのはあまりに寂しい。19年に「自転車利用環境向上会議」の第8回を開催する予定の札幌市や、過去の開催市では金沢、京都が入っていないのも残念だ。
今後、参加はどんどん増えると思われるが、呼びかけた市長さんたちが、主として観光ツールとしての自転車に注目している傾向が強いせいか、「自転車を活用したまちづくり」がサイクルツーリズムに特化したものになりそうな気がして少々心配である。
日本各地には自転車で訪れたい名所、絶景が数多い。走るだけで楽しくなる自然も豊富だ。これまでは、さあ、サイクルツーリズム向けの整備をしました、というので行ってみると、スタンドの付いていないスポーツ車のためのサドル引っかけ式のサイクルラックが置いてあるだけといったところも少なくなかった。サイクリングロードと書いただけの歩道や、車止めだらけのサイクルルート、誘導表示に従うと歩行者を蹴散らすことになる街なかの自転車ネットワークなど、勘違いがまだまだ残っている。
もっとも大事なことは、総合的なまちづくりの視点で環境整備を進めることだ。参加する首長さんたちが、自転車も含めた移動の質を高める牽引役となってくれることを期待したい。
〈文責:小林〉